機械翻訳と人手翻訳のいいとこ取り?
注目の手法ポストエディットとは?

AI(人工知能)の利活用が業務効率化・費用削減に貢献することが様々な分野で言われています。特に労働力不足が問題視される日本では、AIの業務導入に期待度が高まっています。

翻訳分野も例外ではなく、AIによって精度が向上した機械翻訳を実務に取り入れることで、生産性向上を実現する企業が増えています。とは言え、文書の種類や用途によっては、出力された訳文に手直しが必要になることもあります。「自分で手直しする時間がない」、「そもそも訳文の正誤がわからない」といった理由で、費用と時間をかけてでも、人手翻訳に頼らざるを得ないケースも未だ多いのではないでしょうか。近年、こうした課題を解決する手法として、大きな注目を集めているのがポストエディットです。

そこで当記事では今話題のポストエディットとは何か、メリット・ポイントなどをご紹介いたします。

1.ポストエディットの基礎知識

1.ポストエディットとは
ポストエディットとは、機械翻訳の出力結果を人手によりチェックし、間違いを修正することを指します。作業者はポストエディターと呼ばれ、一般的には翻訳以外のスキルも要求されるため、必ずしも「優れた翻訳者=適切なポストエディター」とは限らないと言われます。

2.ポストエディットを活用するメリット
ポストエディットのメリットは、最初から最後まで人手翻訳で行うのと比べて、低コスト・短納期でできることでしょう。通常、翻訳会社に人手翻訳を依頼した場合には「翻訳」と「校正」の作業が発生し、それぞれに翻訳者とチェッカーという職能を有する人材がアサインされます。ポストエディットの場合は、翻訳作業はコスト・スピードに優れる機械翻訳が行い、修正作業のみ人手で行うので、人件費などの費用削減・納期短縮に繋がります。

2.近年になって注目されている理由

1.機械翻訳の進化
ポストエディットは最近になって登場した手法だと思われる方も多いかもしれませんが、その歴史は古く、半世紀前には存在していたとされます。それがこの数年で注目を集めるようになった要因には、機械翻訳の精度向上が挙げられます。当然ながら、出力結果に修正する箇所が多ければ多いほどポストエディターの作業量が増え、費用も時間もかさみます。また、修正の難易度も上がるため、最終的な精度も悪くなりがちです。

機械翻訳が今日のような進化を遂げる以前には、単に「安かろう悪かろう」という印象もあったポストエディットですが、機械翻訳の精度向上により、低コスト・短納期ながらある程度の品質を保つことができるようになってきたのです。

2.専門分野への対応
専門分野・専門用語に対応した機械翻訳が登場したことも大きな要因です。例えば、医療分野に対応していない汎用翻訳エンジンを利用し、申請書をポストエディットするとします。汎用エンジンでは文中に頻出する医療分野の用語や言い回しを正しく訳すことが難しく、結果的にポストエディターの修正箇所が増え、費用も時間もかかってしまいます。分野特化型の機械翻訳により、ポストエディットの効果がより高まったと言えるでしょう。

3.ポストエディット活用のポイント

1.ポストエディットに適している文書
機械翻訳と人手翻訳のいいとこ取りと言えるポストエディットも、残念ながら万能ではありません。製薬・医療・機械・IT分野など専門性や正確性が重視される文書は、機械翻訳の得意分野です。これらの文書はポストエディターが修正する箇所が少なく、コスト・スピードのメリットが大きくなります。また、情報収集目的で海外の論文・特許文書を翻訳する場合は内容がわかれば良いため、機械翻訳だけで事足りることも多いです。そのため、より正確さが必要な申請書などでポストエディットの需要が高く、例えば薬事ならCTD・IB・CSR・プロトコールなどの文書が向いていると言えます。逆に小説・娯楽分野の文芸翻訳や、広告といった表現力・訴求力が求められる文書にはあまりポストエディットは向いていません。

2目的に応じたプランを選ぶ
言語などの要件にもよりますが、ポストエディットを依頼する場合の多くは、必要最低限の修正で納期を優先するライトポストエディット、統一感や読みやすさも加味したフルポストエディットといったレベル分けがされています。希望する納期や、求めるレベルなどの目的・用途に応じたプランを選ぶようにしましょう。

3.機械翻訳の性能が重要
前述の通り、機械翻訳の精度がポストエディットの効果を大きく左右します。出力結果の精度があまりにも悪いと、最初から人手で翻訳した方が良いということにもなりかねません。ポストエディットを依頼する場合には、利用される機械翻訳の精度には注意しましょう。

まとめ

ここまでポストエディットの基礎知識や、メリット・ポイントをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。まだまだ万能ではないものの、ポストエディットの台頭により、機械翻訳の活用の幅が広がったことはまず間違いないでしょう。人手翻訳の費用と納期削減を課題と感じている場合は、一度ポストエディットを検討してみてはいかがでしょうか。