存在感を増す中国市場でビジネスを大きく伸ばすために知っておきたいこと

近年のビジネス市場において、日本と中国の関係性に変化が生じていることは誰もが感じるところではないでしょうか。

ものづくりを支える存在、サプライヤーである「メイドインチャイナ」としてのポジションだった中国が、瞬く間にサービスを享受する側の消費者としての存在感を増しています。

大きなポテンシャルを秘めた巨大な中国市場で成功を収めるには、当然のことながら中国の文化背景や習慣を知ることが欠かせません。

日本側からの言語の歩み寄りが、中国市場でのビジネスを成功に導く

日本における中国のポジションの変化は、ビジネスにおける中国語ニーズにも如実に表れています。ほんの十数年前までは、サプライヤー色の濃い中国側が日本に歩み寄るように、日本語を習得した中国人がサービスを提供するケースがほとんどだった印象です。

しかしながら、中国人消費者の存在感が日増しに強くなっている今日では、日本側からの言語の歩み寄りが、中国市場でのビジネスを成功に導く重要な役割を果たします。

サービスを享受する中国企業・中国ユーザーにとって、日本の製品やサービスを母国語である中国語で利用可能になることは、言語の壁によるフラストレーションを解消すると同時に、消費へのハードルを下げ購買意欲を引き上げるキーポイントになり得るでしょう。 企業間での商談の際には、言語の歩み寄りを通して相手への尊重の姿勢を伝えることにもなります。

なお、世界人口1位を占める中国が購買力を持つようになった今、中国内外を問わず、中国語のニーズが急増しています。国際市場においては、もはや英語と同等レベルに必要不可欠な言語だといっても過言ではありません。

 

日本人は信用してもらいやすい。謙虚になりすぎず、しっかりとアピールを

中国市場でビジネスを伸ばすためにも、言語の歩み寄りに加え、信頼関係の構築にも力を入れたいところでしょう。

中国では自国の人間でも他人を簡単には信頼しない傾向があり、ゆえに人脈や知人の紹介を重視する文化が根付いています。その反面、日本人に対して「礼儀正しく生真面目で嘘をつかない、騙さない」というイメージを抱いているため、比較的信頼を得やすいようです。

例えば、多くの中国人観光客が日本で多数の商品を購入する「爆買い」と呼ばれる行動心理にも、日本へのイメージが現れているように感じます。日本人、日本のお店、日本のサービスは、彼らにとっては「信頼できる」ものなのです。 信頼関係を構築するには、日本人として誇るべく良いイメージはそのままで、相手の文化や背景を理解した上で密なコミュニケーションを図ることが必要です。

また、良くも悪くも中国人はギブ&テイクの積み重ねで関係を強固にしがちです。 相手が自分にメリットをもたらすかどうかをシビアに観察します。

例えば、人脈が広く人望厚いカリスマ経営者と交流を持ちたい場合、自ら買ってでも相手に借りを作りに行き、頼み事などされようものなら、全力で周囲を巻き込みながら全うします。そうすることで、その人とのコネクションができ、後々、自分の頼みごとがしやすくなるからです。このような行為は、日本では往々にして計算高いと敬遠されがちですが、中国では社会で支え合って生きいくための当然の処世術なのです。

そんな彼らとの信頼関係を築いてビジネスを成功させるためには、謙虚になりすぎず、相手にとってメリットをもたらす存在だということをしっかりとアピールしましょう。 そこで関係を持つべき相手だと認められれば、一気に話が深まり、ビジネスへつながっていくケースは珍しくありません。

日本人との差異を埋めながらの通訳・翻訳が鍵を握る

言語や文化が異なる人と信頼関係を築こうとするなら、互いの違いも念頭に入れることが大切ですし、コミュニケーションに誤解が生じないよう、通訳・翻訳の際にはその人が発した言葉の背景にも目を向けなければなりません。安直に表面の言葉を正確に翻訳するだけでは、相手に本質が伝わりきらず、トラブルに発展する可能性が生じるからです。

中国人を理解するとともに、日本人との差異を埋めながらの通訳・翻訳を実現することで、中国でのビジネスを円滑に進めることができるでしょう。

筆者:英香(ひでか)/バイリンガル・翻訳者
中国生まれ、日本育ちのクオーターハーフ。プリント基板業界、精密機器業界、字幕制作業界などにて、中国語通訳・翻訳業務に従事。現在はフリーランスとして、さまざまな案件に対応。イラストレーターとしても活動中。